会社を設立するにあたり、自分(代表取締役)の給料はどうしようと悩む経営者も多いと思います。
巷では、「〇年の上場企業の役員報酬ランキング」など毎年公表されていますね。
金額をみると桁違いの給料を頂いている経営者の方も沢山いらっしゃいます。
けれども実際には、中小企業や一人企業の社長などは全く違う現実があるのではないでしょうか。
ここでは、その役員給与について、基本的な考えを記載していきます。
それを理解した上で、ご自身の給与を決めていってください。
はじめに
経営者の年収については経営者が10人いれば10通りの考え方があります。
沢山の情報を見ていると、平均と比べて低いとか、税法的にはこれが得だ、とか色々出てくると思います。
でもそんな事にとらわれず、ご自身の経営哲学で堂々と意思決定していただきたいと思います。
そして私の思いとしては、経営者には多くの年収をもらってほしい!
中小企業が日本の企業の9割以上を占める、その社長たちがどんどん潤って元気になってほしい!
後に続く社員、将来起業を目指している者に夢や希望を持たせ、社会全体の活力を生む原動力となっていただきたく思っています。
役員給与とは
なぜ毎月の給与金額を決める必要があるのか
結論から先に書くと、法人税法で費用として認められる要件が決められているからです。
その法人税法では、下記の3つものだけが給与として費用と認めれるよ、と定められています。
-
- 定期同額給与
事業年度開始の日から3カ月以内に役員給与を確定させたもの
通常、株主総会の議事録に記載します。
- 事前確定届出給与
株主総会決議後、1カ月以内に税務署へ提出するもの
一般社員でいうボーナスのようなものになります。
株主総会議事録に記載します。
- 利益連動型給与
大手企業(同族会社以外で有価証券報告書を開示するような企業)で一定の要件を満たすもの
利益連動型給与については、今回中小企業向けに記事を書いていますので、説明を省きますね。
※費用とするためには決算期末から2カ月以内に株主総会の承認と、期限内(決算期末から2カ月以内)に法人税の申告書を税務署に提出することが必要です。
- 定期同額給与
いかがでしたが。個人事業主の時とは違い、法人となると上記のような要件が出てきます。
役員給与は、どの会社も法人税法と照らし合わせて綿密に決定されています。
その事を知らずに、役員給与を支払ってしまうと、会社に法人税という税金がかかってきてしまいます。
役員給与額の決め方
実際はどうやって決めていくの?
実務では、下記の方法で決めるケースが多いです。
会社の利益予想、利益計画書を作成していただき、仕入原価や固定費などを除いた利益の金額をご自身の役員給与とします。
この方法で役員給与を決める場合、当然、利益計画がどのくらい正確なのかということがポイントになってきます。
業績が利益予想より悪かった場合、支給する現金が会社になかったとしても、役員給与は上記の要件に該当すれば、費用となります。
しかし、社長個人に対しては、その給与は支払ったものとして所得税などがかかってきますので、注意が必要となります。
また借入などがある場合には、返済資金も考慮して決役員給与を決定してくださいね。
以上のことからも、利益計画から決定する場合には、月次決算を組んでいないと算出が難しいと思います。
図のタイムスケジュールをご覧ください。
月次をしっかり把握していない場合、図を見ていただいて何が問題になると思いますか。
決算期末より2カ月以内に、株主総会の承認で役員報酬を決定しなくてはいけないのですが、タイムスケジュール的にご自身の会社と照らし合わせていかがでしょうか。
何が問題か、それは会計が固まるまでどのくらいの期間を要しているかです。
想像してみてください。
月次決算を取り入れていない会社の場合、だいたい申告期(図の例でいうと、5月くらい)から経理の入力を始めていくのではないでしょうか。
そうすると、あっという間に申告期限が到来し、また、新しい期も始まっていて、業務に戻らねば!
という意識になるのではないでしょうか。
これでは利益計画も立てられませんよね。
月次決算とは何かという方はこちら
月次決算とは|経営者が知るべき3つの重要性を徹底解説!
利益計画を作成した結果、希望額が受取れない場合もあります。
しかし、諦めてはいけません。きっとどの社長も会社を興す段階でその覚悟はできていらっしゃると思いますが、
その希望額を意識していただくことで、会社の業績目標を設定する動機付けにもなります。
そのためにも、普段より将来を見据えた利益計画、事業計画書を作成し、成長できる会社作りにも重点を置いていただきたいと強く願います。
ぜひ利益計画書や事業計画書の作り方も教えてよ
利益計画書や事業計画書についても、社長の熱い想いのこもった計画書を一緒に作成していきましょう。
役員給与を変更する場合
基本的に期中に変更しないことが望ましいです。
ですが、やむを得ない事情がある場合には期の途中で変更しても費用(損金)として認められています。
- 増額する場合
・役員の職制上の地位の変更
・役員の職務内容の重大な変更
(非常勤取締役→常勤取締役への変更)
- 減額する場合
・役員の職制上の地位の変更
・役員の職務内容の重大な変更
(常勤取締役→非常勤取締役への変更)
・経営状況が著しく悪化した場合
(第三者である利害関係者、銀行取引との間で行われる借入返済のリスケジュール協議により減額する場合など)
上記のような事実があり、実際に変更せざるを得ない時には、必ず役員報酬変更の決議を行う必要があります。
株主総会、または取締役会で決議し必ず議事録を作成してください。
また税務調査の時には、この変更の議事録だけではなく変更しなければならなかった理由も示すことになりますので、併せて保存しておいてください。
後で作成するのも大変なので、一通りの手順が終えてから、変更後の役員給与を支払ってくださいね。
役員給与と個人の所得税の関係|節税手段として
この章では具体的に数値をあげて、役員給与と個人の所得税の関係説明していきます。
会社も個人も、双方の節税対策としての役員給与の設定を考えていきましょう。
課税総所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超~330万円以下 | 10% |
330万円超~695万円以下 | 20% |
695万円超~900万円以下 | 23% |
900万円超~1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
適用関係 平28.4.1以後 開始事業年度 |
適用関係 平30.4.1以後 開始事業年度 |
|
・中小法人 |
19%(15%) | 19%(15%) |
・中小法人 所得金額800万円を超えた部分 ・普通法人 |
23.4% | 23.2% |
※ 表中のかっこ書の税率は、平成31年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。
※ 中小法人であっても、資本金5億円以上の大企業に完全に支配されている場合は、普通法人の23.4%の税率が適用されます。
※ 公益法人、医療法人などは省いて、中小法人向けに説明をしています。
見てお分かりのように、ある一定の段階より法人税の方が所得税よりも税率が低くなります。
逆からいうと、ある一定の段階で、所得税の税率が法人税の税率を上回ります。
おおよそですが、527万円を境に個人の実効税率が法人の実効税率を上回るので、
社長への支給は527万円をめどにし、それ以上の利益は会社に残してキャッシュをためるという選択肢となります。
これが節税手段としての役員給与の決め方になります。
出典;三井不動産リアルティより
最後に
いかがでしたでしょうか。
役員給与を会社個人両方の節税対策として設定する場合は、法人税と所得税の税率をみながら決めていってくださいね。
そして、冒頭でも書きましたが、
「経営者には多くの年収をもらってほしい!」が私の願いであり、希望です。
後に続く社員、将来起業を目指している者に夢や希望を持たせ、社会全体の活力を生む原動力となっていただきたく思っています。
顧問税理士の先生がいましたら、期末前に節税対策や利益計画を立てると思いますので、是非役員給与についても質問を投げかけてくださいね。