別会社を設立して節税|7つのメリットと3つのデメリットを分かりやすく解説

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経営が軌道に乗り、会社内でもいくつかの事業が大きくなってきたら、別会社を設立して節税することが検討できます。
別会社として分けた方が、法人税や特例の適用、消費税でも様々な節税効果が見込めることがあります。
もちろん、個人事業をされている場合も、事業が分割できれば別会社設立をして節税することが検討できます。

しかし、節税効果ばかりに気がとらわれてはいけません。
別会社を設立するデメリットもありますので、その点を理解したうえで別会社の設立を検討してみてください。

ここでは、節税のために別会社を設立する7つのメリットと4つのデメリットを紹介します。

別会社を設立|7つのメリット

以前とは違い、新しく会社を作るのが非常に簡単になりました。
別会社を設立することは節税の観点からも、また経営上の観点からもリスク分散になることもあります。

税理士大森
社長!社長とこんな話できる日が来るなんて感無量です!

社長
そうだね。あの時は本当に経営が行き詰まって苦しかったな。
こういう話が出来る日が来るなんて思ってもみなかったよ。

税理士大森
私もです。嬉しい限りです。
経営をしていくと必ず平坦な道のりじゃないですが、危機を乗り越えここまで一緒にやってこれて本当に良かったです。

つい、記事を書いていて感慨深くなってしまいました。

では、どのようなメリットがあるのか具体的に見ていきましょう。
ここであげている別会社の例はいずれも中小法人や中小企業者を前提としています。
ここでは、1億円以下の法人と覚えていただいていれば、ひとまずOKです。

それでも、気になる方のために、中小法人や中小企業者の定義を下記に書いておきますね。

中小法人とは
・資本金(出資金)が1億円以下の法人
※資本金の額などが5億円以上の法人に100%支配されている法人は除かれます。
 
中小企業者とは
・資本金(出資金)が1億円以下の法人
・資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
※下記法人は除かれます。
①常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
②同一の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人
③2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人
 

1.中小法人|年間所得800万円以下の部分について法人税の軽減税率が使える

平成29年12月現在、図のように普通法人の税率はは23.4%です。
その中でも資本金1億円以下の会社で、年間所得800万円以下については15%の税率です。

法人税の税率
  適用関係
平28.4.1以後
開始事業年度
適用関係
平30.4.1以後
開始事業年度

・中小法人
 所得金額800万円以下

 19%(15%)  19%(15%)
 ・中小法人
 所得金額800万円を超えた部分
 ・普通法人
 23.4%  23.2%

※ 表中のかっこ書の税率は、平成31年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。
※ 中小法人であっても、資本金5億円以上の大企業に完全に支配されている場合は、普通法人の23.4%の税率が適用されます。
※ 公益法人、医療法人などは省いて、中小法人向けに説明をしています。

この軽減税率15%を使い、事業が分けれる場合には所得を分散化すると節税対策となります。

例)既存会社Aの所得が2,000万円の場合
①800万×15%=120万
②(2,000万-800万)×23.4%=280.8万
③法人税合計400.8万
 
例)新会社設立した場合 
・既存会社Aの所得800万
800万×15%=120万
・新会社Bの所得1,200万
①800万×15%=120万
②(1,200万-800万)×23.4%=93.6万
③法人税合計213.6万
・既存会社A+新会社B=333.6万
 
所得を分散することで、法人税だけで67.2万円の節税をすることができます。
これに地方税まで加えると、多くの税額を節税することができるようになります。

2.中小法人|年間所得800万円以下の部分について事業税の軽減税率が使える

事業税も上記同様の考え方になります。

事業税の税率
区分 法人の
種類
所得等の区分 税率(%)
H28.4.1~H31.9.30までに開始する事業年度
不均一課税適用法人の税率(標準税率) 超過税率
所得を課税標準とする法人

普通法人等

所得割 軽減税率
適用法人

年400万円以下の所得

3.4 3.65
年400万円超
年800万円以下
5.1 5.465
年800万円を超える所得 6.7 7.18
軽減税率不適用法人

3.中小法人|交際費の使える範囲が多くなる

通常ですと、中小法人では年間800万円までが全額経費にできます。
もし既存会社で1千万の交際費を使っていたら、200万円には法人税がかかってきます。
そこで、新会社を設立し、交際費をうまく分けられれば、経費とできる金額が多くります。
800万円×2社分=1,600万円まで交際費が経費となります。

4.中小企業者|30万円未満の減価償却資産の特例が使える

中小企業者に該当すると、30万円未満の減価償却資産が年間で300万円に達するまで経費となります。
これも別会社があれば、300万円×2社分=600万円まで最大特例を活用することができます。

5.消費税の免除

資本金1千万円未満の法人を設立すれば、最大2年間消費税の納税が免除されます。
そして、新会社での売上が設立後もずっと1,000万円未満であれば、消費税の免税事業者であり続けられます。

6.退職金の計上

新会社に役員や従業員などを転籍させることにより、退職金を支給できます。
退職金は高額になること多いので、節税効果が高いでしょう。
また転籍する役員や従業員個人の税金でも、退職金の優遇措置があり所得税を1/2に抑えることができるのがメリットです。

7.事業年度をずらし利益を移転させる

実際に仕事を受注や発注している場合ですが、決算日をずらすことによって、売上や外注費などの調整ができ利益を移転することもできます。

別会社を設立する|4つのリスク

節税のために別会社を設立するとなると、必ずリスクはつきものです。
特に、節税だけ念頭においた別会社の設立は税務署からもよくは見られません。
否認されてしまえば全く意味のなさないものになってしまいます。
ここでは、どんなリスクが考えれるのかあげてみます。

1.租税回避としての会社とみなされ、税務署が否認する可能性がある

一番のリスクは税務署から租税回避と見られる場合です。
節税のためだけの会社設立だと、税務署から否認される恐れがあります。

上記のメリットであげた5.消費税の免税事業者と7.事業年度をずらし利益を移転などについては多額の節税となります。

別会社として設立する場合には、会社の事業を合理的に分割できるかどうかなど、慎重に判断して進めてください。

2.維持費用が増える

別会社を設立すると、赤字でも均等割りという税金が発生してきます。
東京都の場合、最低でも70,000円の均等割りが発生します。
これが複数社となると、均等割りも会社分増えますし、税理士に依頼した場合はその別会社の数だけ顧問料が発生してきます。

3.赤字の場合には節税対策ができない

別会社を設立後、一方の会社が黒字、別会社が赤字となった場合、節税対策ができなくなります。
単体だった場合には黒字と赤字を相殺することができたのに、節税対策とならない可能性が出てきます。

4.経営する上で、機敏に動けなくなる

1つの法人の決算だけでも時間と手間がかかるのに、複数の会社を持つことで更に時間と手間がかかるようになります。
またグループ全体の事を視野にいれ経営をしていくことになるので、1人で複数会社の経営や対応していくのが難しくなります。

最後に

別会社を設立して節税する方法はいかがでしたか。
事業を分割して別会社を設立することが、組織的に必要な事であれば、もう一つ会社を設立すべきです。
しかし節税のためでしたら、今一度メリットとリスクを把握し慎重に進めてください。

また会社が黒字で事業が分割できそうな場合、顧問の税理士の方がいらっしゃるなら、相談してみてくださいね。

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この記事を書いた人:税理士 大森順子

大森会計事務所 代表の大森です。 税金のこととなると途端に難しい言葉や税率が飛び交う世界。 ブログで税金の事を分かりやすく丁寧に説明しています。 「税理士をもっとより身近に!」感じてくださいね。

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