個人事業主のための節税マニュアル

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節税対策はできていますか?
個人事業主の節税を書いている書籍やインターネットでの情報は巷に溢れていますが、つい日々の業務に追われ後回しにしがちです。
個人事業主の節税といっても状況は業種によっても千差万別です。
今回はどのようなものが経費となるのか、経費とならないのか、
またどのようなものが節税で役立つのかできるだけ具体的に説明していきたいと思います。

節税を行うための基本

節税対策を一番行いやすいのが、毎年確定申告で税務署に提出している「所得税」となります。
基本的な計算方法はこのようなものになっています。

所得税={収入ー必要経費(所得)}-所得控除)×税率

必要経費と所得控除のところが節税対策するうえで重要なポイントとなります。
では次からのところで必要経費について具体的にみていきましょう。

必要経費について

どの業種でも経費となるもの

白色申告、青色申告関係なくどのようなものが、経費になるか見ていきましょう。
まずこの部分の経費に漏れがないか確認してください。
※下記のいずれもプライベートで使用している部分があれば事業部分の案分が必要となります。

<店舗や事業所部分>
・家賃
・固定資産税の納付額
・水道光熱費(電気・ガス・水道・灯油)
・固定電話
・インターネットのプロバイダー
・棚やデスク
・消耗品や事務用品
 
<車関係>
・車本体
・自動車税
・自動車保険
・車検代
・ガソリン代
 
<その他>
・事業税の納付額
・消費税の納付額(税込み経理の場合)
・交際費
・交通費
・借入金の利子
・携帯電話代
・損害保険料
・商工会への会費
・書籍、新聞代
・レストランやカフェでの飲食代(仕事に関係する打ち合わせや、仕事のスペースとして利用する場合)
税理士
節税対策ばかりに目が行きがちですが、
日ごろの経費の見落としがないかちゃんとみるだけでも
だいぶ違ってきますよ!

どの業種でも経費とならないもの|Part1

・所得税の納付額
・住民税の納付額
・源泉所得税の納付額
・私的に消費した商品代

どの業種でも費用とならないもの|Part2

下記のものは、経費ではなく所得控除の項目となります。

・国民健康保険料
・国民年金
・生命保険料
・自宅の地震保険料
・通院費、それに関する薬代や交通費
・ふるさと納税で支出した金額

これ経費?|質問の多い項目

①温泉地などへの宿泊
②マッサージ
③エステ
④ブランド物の装飾品や衣服
⑤スポーツクラブの会費
⑥託児所

実は、上記の中には業種やその時の状況により本当にケースバイケースですが経費となる場合があります。

社長
温泉いいねー経費にしたいよ!どうすればいいの??
税理士
温泉など、上記のようなものがすべて経費となればうれしい限りですよね。
具体的な考え方を書いておきますね。

①温泉地などへの宿泊
執筆家やカメラマン、広告関係の業種で、執筆や取材、マーケティングのためと言った目的があれば、経費と認められるでしょう。

②マッサージ
プロスポーツ選手がシーズン中などの体のメンテナンス向上を目的とするのなら経費と認められるでしょう。

③エステ
モデルやタレントの方などTV出演に関して支出するものなら経費と認められるでしょう。
なおリフレッシュによるエステやマッサージはNGです。

④ブランド物の装飾品
プライベートで使用しないことを前提に、経費として認められることもあります。

そして残念ながら、
⑤スポーツクラブの会費と⑥託児所は経費となりません。

⑤スポーツクラブ
事業主自身の健康維持などを目的とするものですと経費にできません。
(しかしスポーツクラブの方とお付合いすることで商品を卸してもらうなどの理由があれば経費として認めれるかもしれません。)

⑥託児所
保育施設に預けることは育児の委託であり、事業に直接の関係がない、すなわち育児はプライベートと考えられるため経費とは考えられていません。

社長
いやいや、おちびちゃんがいたら仕事できないっしょ!
仕事する上で重要な出費だよ!

税理士
おっしゃるとおりですよね!私もそう強くおもいます!
でも、今の制度では経費にできないのが現状なんです。

上記はほんの一例にすぎませんが、「これ経費かな?」と思ったら、ご自身の業種で業務の関連性があるか否か、業務に関連性があると判断した場合、常識の範囲内(←これが一番難しいですね)でしっかりとした道筋をたてて説明できるようにしておくのが経費となるポイントとなります。


疑問に思うような経費については、税理士によっても見解は様々です。

このように疑問に思う経費については保守的(経費としない)な処理をする先生が多いように見受けられます。
中には経費としてもいいよ、と考える先生もいらっしゃいます。
決して、保守的な考えの先生が悪いと言っているわけではありません。
リスクと考える場合、わざわざリスクある処理を選ぶのは税理士にとって嫌なのも事実です。

色々な考え方があるので、意見を聞くだけでも勉強になりますよ。
疑問な経費がある場合、顧問税理士の先生がいらっしゃるなら是非聞いてみてくださいね。

青色申告による節税

この青色申告による節税については、ほかのどんな節税対策よりも優先させるべき、避けては通れない節税対策となります。

①65万円控除(若しくは10万円控除)
複式簿記による記帳をし貸借対照表を添付することによりこの青色申告特別控除が受けられます。

②赤字の繰越し
事業をしていれば波があるのは当然のことです。
去年は赤字だったけど今年は儲かって利益が残った、ということが出てきます。
このような場合に、過去3年間の赤字を繰り越して今年の黒字と相殺することができる特典となります。
これは非常に大きなメリットとなります。

③青色専従者
家族で一緒に事業を営む場合に、配偶者や子ども、その他親族に支払う給与の支払額を経費とすることができます。
そのためには下記の6つの要件を満たすことが条件となります。

1)本人と生計が同じである配偶者やその家族
2)年齢が、その年の12/31時点で15歳以上
3)原則その年における事業に従事している期間が6カ月超であること
4)「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
5)この特例の届出書に記載した金額の範囲内で適正に支給していること
6)支給した金額が労働の対価として適正な金額であること

適正な金額がいくらかというと、世間一般の常識的な金額というよりほかはありません。
また節税するうえでいくらが妥当な金額なのかは状況により変わってきます。
そして給料をもらう側(配偶者や子ども)の給与所得に対しても、課税や社会保険の負担が生じてくることを忘れないでください。
そして最後に気を付けていただきたいのが、青色専従者給与を支払うと、配偶者控除や扶養控除の対象から外れることになりますのでご注意ください。

④30万円未満の少額減価償却資産が一括で費用計上
30万円までのものは300万円に達するまで買った年度の経費とすることができます。
白色申告だと10万円までです。
事業を行う上で、10万円以上30万円未満の価格帯のものはかなりあります。
例えば、パソコン、応接セット、エアコン、コピー機などこの価格帯になるのではないでしょうか。
こういった備品や設備が一括で費用に計上できる特典なので非常にメリットがあるといえます。
少額減価償却資産とは|特例を活用して節税しよう!

⑤貸倒引当金などの費用計上
これは売掛金などの回収ができない可能性に着目し、あらかじめ一定額を損失として先に入れておくというものになります。
お金は支出していないけれども、費用が増えるとひとまず認識しておいてください。
どんな場合に計上が認められるかというと、

・会社更生法などの規定によって更生計画許可の決定があった
・会社更生法などの規定によって更生手続きの開始申立てがあった
・手形交換所の取引停止処分があった
・債権者集会の協議決定があった

これ以外のものについてはまとめて一律に計算し、貸倒引当金として計上します。
貸倒引当金の要件についてはかなり細かいのでここでは上記の概要を押さえておいてください。

保険を使った節税

中小企業倒産防止共済掛金|費用計上

制度の概要:経営セーフティ共済とも呼ばれるこの制度は、取引先の倒産の影響を受けて連鎖倒産や経営難に陥ることを防止するための共済制度
最高8,000万円の共済金の貸し付けを受けられる

*節税対策として

毎月5,000円から200,000万円までの一定額を掛金として、年間で最大240万円も費用計上できる

*魅力的な点

・掛金の上限が800万円
・40カ月(3年4カ月)以上掛金を納付し続けると、支払額の100%が解約手当金として支払われること
・年払いが可能

小規模企業共済等掛金|所得控除

制度の概要:小規模企業の個人事業主の方が事業を廃止した場合など、その後の生活資金や事業再建などのための資金を準備しておくための共済制度
「個人事業主の退職金制度」ともいわれている制度

*節税対策として

毎月1,000円から7万円までの一定額を掛金として、年間で最大84万円の所得控除ができる
前納期間が1年以内の掛金も、その前納掛金を支払った年分の掛金として所得控除ができる

*魅力的な点

加入後6か月以後であれば「個人事業の廃止」「老齢給付」など、加入者に当てはまる事由により掛金の納付月数に応じて給付を受けることができます。
また共済金の受け取り方についても、「一括受取」(退職所得)「分割受取」(公的年金等の雑所得)「一括受取と分割受取の併用}を選択することができます。

法人化

よく法人成りなどの言葉を耳にすると思います。個人事業を行っていた事業主が、法人を設立しその会社の役員となることをさします。
ただし、利益が少ないと節税メリットはほとんど感じられないでしょう。
目安としては所得が年間600万円くらいの時に法人化するメリットが出やすいです。

<メリット>
・所得の分散(役員報酬の給与所得控除を利用)
・退職金が費用
・生命保険料の一部または全部が費用
・社宅が費用
・旅費や日当
・中小法人の軽減税率がある
所得のうち年800万円以下の部分→15%
800万円を超える部分→23.9%


法人化すると税金面のメリットはかなり出ますが、個人事業と違い管理体制をしっかり整備する必要が出てきます。

<デメリット>
・社会保険の加入義務
・お金の自由度
・接待交際費に限度額がある
・赤字でも均等割りという税金が発生する
・事務作業の手間が増える

節税をする上での心構え

納税は国民の義務です。納税をすることがお金をためる一歩といっても過言ではありません。
節税意識ばかり先に立ち、闇雲にいろいろな物に手を出すと、時として無駄遣いになり手元にお金が残らないことにもなりかねません。

最後に

いかがでしたか。
節税について述べてきましたが、節税知識を得ることでご自身の事業に合った対策をとることができるはずです。
そのためには、日々の経理を面倒くさがらずに適正な経理処理をを行っていくことが大事になります。
年度が過ぎてから慌てて大量の作業をやらなくて済み、その結果節税対策が行えることになるでしょう。

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この記事を書いた人:税理士 大森順子

大森会計事務所 代表の大森です。 税金のこととなると途端に難しい言葉や税率が飛び交う世界。 ブログで税金の事を分かりやすく丁寧に説明しています。 「税理士をもっとより身近に!」感じてくださいね。

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