飲食店の内装工事|減価償却3つのポイントを押さえ確定申告に挑もう!

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飲食店を開業するにあたり、初期投資で多額の内装費がかかる場合が多いです。

会計や税務上ではその購入した金額に応じて「消耗品」や「固定資産」として計上します。

今回はその金額についてどう判定するのか、また実際の計算について具体例を挙げて説明していきます。

はじめに

確定申告時期になり、改めて内装工事費について考える方も多いかもしれません。

税理士などにお願いしていない場合はご自身で何とか答えにこぎ着けないといけません。

ポイントさえ理解し順を追って計算すれば難しいものではありません。

例題を見ながら一緒にやっていきましょう。

3つのポイントとは

1.請求書の金額を勘定科目ごとに分類する
2.償却方法ごとの計算方法
3.申告書への書き方

内装工事の減価償却のあらまし

まずは全体像から見ていきましょう。

申告書に「減価償却費」と記載するために下記計算を行います。

取得価額×各種償却方法による償却率=減価償却費
 

請求書の金額を勘定科目ごとに分類

次は、勘定科目、取得価額。償却方法、耐用年数を決めるために、請求書の金額を分類していきます。

自己所有物件の建物に内装工事をする場合

内装工事の請求書の内容と下記の表の中から、建物と建物付属設備に分類し取得価額決定します。

分類するポイントは、建物付属設備に該当するかどうかを見て、該当しない場合には建物の区分とするのが分かりやすいです。

賃貸物件の建物に内装工事をする場合

恐らく、賃貸物件で飲食店を始められる方の方が多いのではないでしょうか。

内装工事部分の取り扱いが、自己所有の物件に内装工事をする場合と少しだけ変わるのみです。

自己所有の内装工事は資産価値の増加で「建物」になり、

賃貸物件の場合は「建物付属設備」となります。

 内装工事の耐用年数は、下記の2通りの見積もり方があります。

1.その建物の耐用年数、内装工事の種類、用途、使用した材質などをみて、合理的に見積もる方法

2.賃借期間を耐用年数として償却する方法
※下記2つの要件を満たしていることが条件
①賃借期間の定めがあり、更新ができないものあること
②有益費の請求または買い取り請求をすることができないもの
有益費とは:改良やその他価値を増加させるための費用
(例:店舗の入口改装費用、カウンター、シンクなど)

(注)法人が賃借した建物の建物附属設備について内部造作を行った場合は、その建物附属設備の耐用年数により償却


ここで、内装工事と一口で言ってもどの部分までを内装工事というのか疑問になると思います。

建物自体に造り付けるたり付加すること、と考えるといいでしょう。

・厨房を新たに造る(厨房機器、器具は除く)
・カウンターを作る
・床材や壁紙などの内部の模様替え

などがあてはまります。

電気設備や厨房の排水設備、消防設備、店の看板などは内装工事(内部造作費)からは外し、冷蔵庫・コンロ・キッチンの取付も外します。

見積もりの中から外れるものをすべてとってしまい残ったもの、仮設工事代、壁一部撤去代・床撤去代・壁左官工事・床工事などを一式したのが、内装工事(内部造作費)と考え、耐用年数を見積もるといいでしょう。

合理的に見積もると言っても、難しいので、建物付属設備のその他のものとするのがいいと思います。

詳しい手順は下記の例題で確認してみてください。

国税庁:参考HP
他人の建物について行った内部造作の減価償却の方法
No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数
No.5406 他人の建物に対する造作の耐用年数Q&A

分類表|構造・用途、耐用年数、勘定科目

建物


建物付属設備
機械及び装置
 
器具備品


参照:国税庁HP 耐用年数(建物・建物附属設備) 
参照:国税庁HP 耐用年数(別表第二 機械及び装置)
参照:国税庁HP 耐用年数(器具・備品)(その1) 

耐用年数より償却率を確認

上記で勘定科目と耐用年数を確認したら、次は耐用年数をもとに償却率を探します。

参照:国税庁HP

各種償却方法と計算方法

ここでは償却方法のメインである定額法と定率法について説明していきます。
因みに事業を営んでいる経営者の場合、税務署に届け出をしていない限りは「定額法」での償却となります。
所得税と法人税で違う点ですので、注意してください。

定額法の場合|平成19年4月1日以降取得分

取得価額×定額法の償却率
※平成28年4月1日以降に取得した建物付属設備と構築物に関して定額法のみとなっています。

旧定額法の場合|平成19年3月31日以前取得分

取得価額×0.9×旧定額法の償却率

※今回は平成19年3月31日以前取得分に関しては詳細は割愛させていただきます。

参考:定率法の場合|平成19年4月1日以降取得分

・未償却残高(取得価額―前年度までの償却費の合計)×定率法の償却率
・改定取得価額×改定償却率
(減価償却費(調整前償却費)が償却補償額(取得価額×保証率)より低くなったらこの式で計算する)
※平成28年4月1日以降に取得した建物付属設備と構築物に関して定額法のみとなっています。
※減価償却の届出を行っていない場合は、法定償却方法が「定額法」であるため、改正の影響は最初から生じません。

参考:旧定率法の場合|平成19年3月31日以前取得分

取得価額×0.9×旧定率法の償却率

※今回は平成19年3月31日以前取得分に関しては詳細は割愛させていただきます。

※全ての計算において
 期の途中で取得した場合は、使用月数/12を掛けます。

具体例と記載例

ではここからは具体例を見ながら実際に分類し、計算していきましょう。
免税事業者、税込み経理の場合、いずれも記載する金額は税込みの金額となります。

自己所有に内装工事をした場合

請求書を見ながら、下記図のように分けていきましょう。

例)平成30年2月に施工完了、引き渡し、使用開始


明細書をもとに、分類してみましょう。

少額減価償却資産の特例は、その取得年度に全額を償却できるので、利益が出ている時には効果を発揮します。少額減価償却資産の特例が使用できるのは、青色申告承認申請書を期限内に提出し要件を満たしている場合です。

しかし当面利益があまり出ないと予想する場合は、固定資産ごとに分類し通常の減価償却費を計上します。

上の表の業務用冷蔵庫で例えると、器具備品として減価償却します。
・業務用冷蔵庫→「器具備品」電気冷蔵庫6年 償却率0.167

少額減価償却資産として一度に費用とするよりも、6年間かけて償却するので費用が少なく計上できます。

関連記事はこちら
少額減価償却資産とは|特例を活用して節税しよう!
個人事業主のための節税マニュアル

自己所有の物件に内装工事をした場合|申告書への記載例

今回は色んな事例を見ていただきたいので、看板工事と業務用冷蔵庫は「少額減価償却資産」、照明器具は「一括償却資産」とします。

記載例)減価償却費の明細

解説)耐用年数
①店舗プレハブ:「建物」の金属造、骨格材3mm以下 19年
②店舗造作費用:資産価値を増すものと考えられるため「建物」、店舗プレハブと同じ19年
③電気設備:「建物付属設備」の電気設備、その他 15年
④エアコン:「建物付属設備」の冷暖房設備 13年
⑤厨房器具一式:「機械及び装置」の飲食店業用 8年
⑥看板と業務用冷蔵庫:「少額減価償却資産」で全額償却
⑦照明器具:「一括償却資産」として1/3償却

記載例)貸借対照表

記載例)損益計算書

価償却費明細の本年分必要経費算入額の合計

賃貸物件に内装工事をした場合

例)平成30年2月に施工完了、引き渡し、使用開始


明細書をもとに、分類をしてみましょう。

 


記載例)減価償却費の明細

解説)耐用年数
①外壁補修工事と店内造作費用:
「建物付属設備」の一番下、前掲以外のもの、その他 10年
②電気設備:「建物付属設備」の電気設備、その他 15年
③エアコン:「建物付属設備」の冷暖房設備 13年
④厨房器具一式:「機械及び装置」の飲食店業用 8年
⑤照明器具:「一括償却資産」として1/3償却
⑥看板と業務用冷蔵庫:「少額減価償却資産」で全額償却

記載例)貸借対照表

記載例)損益計算書

減価償却費明細の本年分必要経費算入額の合計

最後に

いかがでしたか。ポイントを押さえればあとは、計算し入力や記入をするだけです。

今回、ブログであげた例題や記載例は一例となります。

減価償却費は非常にインパクトのある経費となりますので、申告される際は無料の税務相談を活用したりすることをお勧めします。

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この記事を書いた人:税理士 大森順子

大森会計事務所 代表の大森です。 税金のこととなると途端に難しい言葉や税率が飛び交う世界。 ブログで税金の事を分かりやすく丁寧に説明しています。 「税理士をもっとより身近に!」感じてくださいね。

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