減価償却をしないで節税とは?|法人の節税対策を詳しく解説

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法人の減価償却は任意の金額でOKということを知っていますか。

法人の決算期に利益がでており、過去の赤字の繰越しである繰越欠損がある場合、減価償却費で節税できます。

今回はその仕組みについて、図解や具体例を挙げながら分かりやすく説明していきます。

任意の金額を計上できるのか|減価償却の制度

減価償却費の計算は、代表的な計算方法として「定額法」や「定率法」などあります。

どの方法で計算した場合も法人税法で、その計算した金額までなら損金(費用)として認めてあげるよ、という金額なのです。

なので、定額法などで計算された金額をそのまま計上しなくてOKなのです。

繰越欠損がある場合|なぜ減価償却費で節税できるのか

法人が赤字である場合、その赤字は翌年以降最高9年繰り越しができます。

当期利益が出ていて、9年前の赤字がまだ残っている場合には減価償却費の制度を使い節税することができます。

上記でも少し書きましたが、法人税法では減価償却費に限度額というのを定めています。

限度額以上なら税金がかかりますし、限度額以下ならそのまま費用として認められます。

期限となる繰越欠損金が多くある場合、減価償却費を少なく計上し利益を多くすることにより、繰越欠損金を使い切る事が出来るのです。

9年前の繰越欠損は使い切れなかった場合、切り捨てとなります。

まだ余っている限度額については、耐用年数経過後の年度の費用として計上できるため、今後利益が出そうな場合も有効活用が出来るのです。

図解|具体例

順を追ってみてみましょう。

①建物付属設備を取得

②減価償却費のタイムスケジュール

③欠損金を有効活用できない場合

当期の利益が2,000あるとしましょう。

9年目の決算に9年前の繰越欠損2,500がある場合の法人税の表です。

 

繰越欠損金が2,500あるのに対し利益が2,000なので、500は切捨てとなります。

④欠損金を有効活用するためには

任意の減価償却費を計上を計上して2,500の欠損金をフル活用してみましょう。

まず限度額以下の任意の減価償却費500をPLに計上します。

そうすると下記の図のようになります。

法人税の欠損金の表を見てみます。

9年前の欠損金がすべて使用できるようになりました。

少額減価償却資産、一括償却資産、10万円未満の資産について

少額の資産を購入した場合、下記の3つの方法で償却することができます。

①10万円以上30万円未満の資産について
少額減価償却資産の特例で全額費用にできる

②10万円以上20万円未満の資産について
一括償却資産の特例で年間に1/3ずつ費用にできる

③10万円未満の資産については
全額消耗品費として費用となる

上記の場合についても、固定資産として計上し償却を行わないという事もできるのです。

使わなかった償却額限度額|耐用年数が経過後の費用となる

使わなかった償却限度額の余りは耐用年数経過後の費用となります。

具体的にどうなるのか、ピンとこない方も多いかもしれません。

図をご覧ください。

会計上9年目に任意計上した減価償却費が500あります。

法人税法上では本来の限度額から任意計上した償却費500を差し引いた「減価償却不足額」500が計上されます。

10年目も上記同様です。

そして耐用年数経過後の11年目以降にトータルの償却不足額999円までなら解消される、つまり費用としてOKということになります。

合計のところをみていただくと会計上も法人税法上も同額となっています。

これは何を意味するかというと、限度額までならどこで何を計上したとしても、費用として認められるよということになります。

注意点

融資を受ける場合や上場を目指している場合には注意が必要です。

①融資を受ける場合

銀行や保証協会は、会社から決算書を出されたら、必ず減価償却の項目をチェックします。

それは減価償却費が調整されずに計上されているかを見るためです。

役員給与についても期中に変更すると税金がかかるようになっているのに、

減価償却費を調整していたら利益操作しているように見えるからです。

②上場を目指している場合

適正な会計基準というものも存在しているため、監査が入るような会社では減価償却の任意計上は指摘が入ることでしょう。

上場を目指しているところで9年前の繰越欠損金が余っているというケースはあまりないかもしれませんが、一応頭の片隅に置いておいてください。

③まとめ

だからと言って一概にこの処理が悪いかというとそうでもありません。

上記の②上場を目指している場合以外は、しっかりと説明できればそこまで問題にならない場合が多いです。

何が悪いかというと、節税対策ではなく利益操作に利用することです。

費用を少なく計上し、PLの利益を多く見せたり、

限度額以下の任意の減価償却を計上すると、BSの資産が多く計上されることになり債務超過を隠そうとするなどです。

このような利益操作を目的とする減価償却費の任意計上は簡単に見破られることでしょう。

おわりに

決算前によく当期の利益の推移や着地点を予測しながら、会社にとって一番いい節税対策をとってください。

節税対策の一つに減価償却費を計上しなくていい、といういうことを知っておいてくださいね。

税理士事務所などにお願いしている法人は、決算前にその期の利益の予測をしどのような節税対策が行えるかという打合せをするところも多くあります。

もしお願いしていなくても自社で利益予測をすることが出来れば、問題ありません。

是非この節税対策が使えそうなら、ご活用ください。

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この記事を書いた人:税理士 大森順子

大森会計事務所 代表の大森です。 税金のこととなると途端に難しい言葉や税率が飛び交う世界。 ブログで税金の事を分かりやすく丁寧に説明しています。 「税理士をもっとより身近に!」感じてくださいね。

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