法人の社宅節税方法|役員社宅【会社所有編】

法人の社宅節税方法|役員社宅【会社所有編】
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八王子の駅から少し離れた道を歩いていると、豪華な戸建てが目に入ってきました。
塀がレンガ調で出来ていて、いたるところにセコムマークが!いかにも大物が住んでいる匂いがします。
近所の方のうわさから、「〇〇会社の社長さん宅みたいよ。」と。
皆様も街中を歩いていたら、そんな豪邸を目にするのではないでしょうか。

今回は、社長や役員の方の住んでいる家について、会社が所有している場合の節税方法を説明していきます。
賃貸物件の社宅の節税については法人の節税方法|役員社宅【賃貸編】をご覧ください。

社宅の種類

社宅と一言でいっても、役員社宅か従業員社宅か、購入物件か、賃貸物件かで、下記の4つの条件が考えられます。

①社長や役員の社宅|法人が分譲マンションや戸建てなどを購入する場合
②社長や役員の社宅|法人が賃貸マンションや戸建などの建物を賃料を払って借りる場合
③従業員の社宅|法人が分譲マンションや戸建てなどを購入する場
④従業員の社宅|法人が賃貸マンションや戸建ての建物を賃料を払って借りる場合

もちろんですが、それぞれにメリットデメリットがあります。
今回は冒頭でも書きましたが
「①社長や役員の社宅|法人が分譲マンションや戸建てなどを購入する場合」
を説明していきます。
社長や役員が実際に住んでいる家について、会社が所有している場合、どのような節税となるのか見ていきましょう。

社宅がなぜ節税になるか

会社名義で住宅を購入する場合、下記の費用などが経費となります。
その結果利益を減らすことができるので、節税対策として用いられています。

・借入金の利息
・固定資産税
・不動産取得税
・登記料
・印紙代
・減価償却費
・付属設備等(エアコンなど)
・修繕費(内装や外壁の塗装など)

社長
こりゃいいねー!住宅購入の時は会社で買おう!

税理士
魅力的ですよね!でもメリットデメリットがあります。
今から説明しますので、それを理解してから決めましょうね。

会社の所有の社宅|4つのメリット

①上記であげた借入金の利息などが会社の経費となる

考えてみてください。個人で購入した場合にはどれも経費とならず自費です。

②経営者が会社に支払う家賃が相場より安くすむ

家賃設定については、なんでもいいわけではありません。
社宅として税務署に認めてもらうためには「一定額以上の家賃」を支払っていなければなりません。
「一定額」については、算式により定められていますが、だいたい家賃相場の2割ほどになります。
算式はこちらより(国税庁HP)

社長
えっ?家賃としてお金払わないといけないのか・・・
思ってたよりメリットないんじゃない??

心の声が私には聞こえてきましたが、皆様どう思われましたか。

税理士
お金を支払っても魅力的ですよ!
順を追って考えてみましょうね。

例えば、周辺相場で20万して借りるマンションや戸建ては、普通に個人で借りれば20万で給料からその費用は出ていきます。
しかしこれを会社社宅とすると約2割の支払い、約4万円を会社に支払うだけで家賃相場20万円のところに住めるのです。
そして、住居の利息や固定資産税、減価償却、外壁の塗装などの修繕がすべて会社の経費となるのです。

いかがでしたか。いいことづくめに感じませんか。

注意すべき点が2つあります。
①世間一般的にみて、豪華すぎる物件とみなされると、社宅を使った節税ができなくなります。
②99㎡(木造は132㎡)を超えると上記の「一定額」の家賃が高くなります。
・豪華な社宅とは
床面積が240㎡超のものや、広くなくても内装が豪華すぎたり、プール付きである場合など

やはり税務署も甘くはありませんね。
私が見た八王子での豪邸は、あまりにも広かった!会社社長個人のものということになりますね。

③相続対策として

会社所有だと、社長や経営者自身が所有しているのに比べて、相続税の評価額がその分なくなるので相続税の節税対策にもなります。

相続税の節税対策として土地や建物を活用するメリットについては
法人を利用した相続税の節税対策|土地や建物を活用するメリットについてをご覧ください。

④売却について|損が出た場合

取得価額よりも低い価格で売れた時については、会社の損失として法人税を減らすことができます。

会社の所有の社宅|5つのデメリット

①個人の所得税の住宅ローン控除が使えない

個人で住宅を購入すると、ローン控除というご自身の所得税から控除できる制度があります。
一般的な住宅だと約10年にわたり、借入残高に1%をかけて最高400万円が所得税から控除できます。

②借入の条件が悪い

個人で住宅ローンを組む場合、金利の低い商品を選択できますが、会社で住宅を購入する場合は住宅ローンが組めません。
住宅ローンよりも条件が良くない、金利の高い不動産担保融資などで借りることになります。

③売却して儲かった場合|個人側

個人の所得税の特例である「マイホームを売ったときの特例」が使えない。
売却益にそのまま課税するのではなく、儲かった分から最高で3,000万円を控除していいよ、という特例です。

④売却して儲かった場合|法人側

売却して儲かった分がそのまま利益として計上され、法人税がかかり税金が発生します。

⑤売却して損が出た場合|個人側

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が使えなくなる。
これは、売却で損した分を条件を満たせば、ほかの所得からも引いてあげるよ、という特例です。

一番のリスク

「不動産の将来的な価値」の見極めです。
特にデメリットをみてお分かりのように、売却時の損益で、法人所有が得なのか、個人所有が得なのか、かなり変わってきます。
不動産の将来的な価値について予想があたるのなら、投資で失敗することもないし、どの節税対策も成功できることでしょう。
しかしそうはいかないのが世の常です。
リスクだけはしっかりと頭に入れておいてくださいね。

まとめ

会社が所有する物件を社宅として節税する方法はいかがでしたか。

会社で所有する方が、個人で所有するより節税になる場合があります。
これを見てくださった皆様にとって、メリットデメリットどちらが大きかったでしょうか。

検討される場合は、法人の節税方法|役員社宅【賃貸編】も必ずお読みになってください。

個人的な見解としては、リスクがあまりない賃貸物件での社宅がいいかなと思います。
ほとんどの税理士もそういうでしょう。
けれども、最終的な判断は社長となります。
どんな社宅の節税方法があるかを知ったうえで選択するのと、何も知らないで言われるがままにやるのとでは、雲泥の差です。

そして、顧問税理士がいらっしゃるのでしたら、購入する際には必ず相談してくださいね。
相談すればおおまかに試算してくれるでしょう。
法人側、個人側でのシミュレーションがあると、イメージが湧き選択しやすくなります。

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この記事を書いた人:税理士 大森順子

大森会計事務所 代表の大森です。 税金のこととなると途端に難しい言葉や税率が飛び交う世界。 ブログで税金の事を分かりやすく丁寧に説明しています。 「税理士をもっとより身近に!」感じてくださいね。

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